ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

中洲さん、人力飛行に挑む

 いつも身の置き所が無い。中途半端な、中洲のようなところに立っていて、川のあちら側とこちら側が両方よく見えるのに、そのどちらからも隔たった場所にいるように思う。

 中島らもは、アルコール、ドラッグ体験についてある種サバイバーズ・ギルトのような感覚を持っていたように思う。その表れ方は、罪悪感というよりも「みんなあっちに行ってもうた」という寂しさのようなものだった気はするが、結局は彼も、中洲で遊んでいるうちにあちら側へ流されて、二度と戻ってこれなくなった。実に彼らしい、愛嬌のある冴えないやり方で。

 いまのところ、おれは中島らもほど酩酊することはないし、彼よりは随分とこちら側にいるつもりだが、その自己認識だって怪しいものだ。一方で、ちゃんと、まっとうに日々暮らしている、もっとこちら側の人たちのことを思うと、おれもこの中洲から、ちょっとあちら側の小島に泳いで渡ってみたいなという気持ちにならないではない。でも、結局泳ぎ出せないのがおれの良いところだ。どうせ進むなら、空中に向かって垂直に平泳ぎするような、そういうものにおれはなりたい。なんで浮いてんの、みたいな。

 昔はよく飛び方が解る夢を見たのだが、このところ、スーパーにいる夢が多い。地獄産豚ロース100g666円、うーん、今日は魚にするか・・・ややっ、万引きだ、殺せ!殺せ!デビールマーン!(あれは誰だ?)その光景をぼんやり眺めながら、平和だなあとレジに並んでいる。万引き犯はとても永井豪タッチなのだが、レジ前はすごく明るくて清潔だ。デビルマネーはあぶく銭、ポイントはお貯めになりますか?あ、使ってください・・・そろそろ万馬券でも当てるか・・・

 最近、当たり前のことばかり考えているような気がする。多分それは、とても良いことだろう。