ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

小さい

 少し前に、仏壇マクベスと呼ばれる舞台を見てきた。こういう大掛かりな舞台演劇を見たのは初めてで、鑑賞に耐えるだけの文化的な体力が自分にないから、あっけにとられてしまった。

 正直なところ、演劇は分かりにくい。テレビや映画を見慣れているからか、マイクを付けていない俳優の台詞は聞き取りにくく、アップになるわけでもないので表情も見えにくい。それに、カメラがないということは自分の目線が自由な訳で、カット割りによる情報の補正が効かないのだ。結局、入力されてくる情報が薄ぼんやりとしたものになる。普段見ている映像がいかに親切で、素人にも容易に鑑賞し得るものであるかということがよく分かる。

 一方、映像では絶対に表せないのは「小ささ」の表現で、これには度肝を抜かれた。「小さい」ということが恐ろしくリアルなのだ。140センチ台の低身長ロリ女優の、肝心なその小さがよくわからないAVに感じる歯がゆさに比して、この仏壇マクベスに現れる二人の奇怪な老婆の小さいことと言ったらない。ひょこひょこと舞台に進み出る動きと、その体の小さが妖怪じみていて、見てはいけない存在を目撃してしまった気まずさ、驚き、尻の座りの悪さを直接体験させられてしまう。これは映画やテレビでは感じたことのない感覚だった。