ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

37位「蟹に誘われて」Panpanya(ランキング形式で、オススメの漫画ベスト100を紹介できなかった)

 漫画ベスト100をずっと書いていたが、いつまで経っても書き終わらないので書くのを諦めた。しかし、諦めが悪いので、一点だけ申し上げておくと、田島列島の次はPanpanyaが来る。「蟹に誘われて」は大傑作だった。暫定37位。

 ガロ系の流れを汲んでそうな、現実でありながらどこかずれている、変な世界観の短編集。薄い鉛筆で描いた塗り絵の輪郭のような、ちょっとピンぼけで可愛い絵柄の登場人物が、黒々として書き込み量の多い、リアルなタッチの背景から浮き上がって見える。人物が背景から浮き上がりつつも馴染んでいるのは、どちらも定規を使わない手書きの丸い線で描かれているからだろう。他に類を見ない独特の画風だ。パースのきつい迫力のあるややリアルな田園都市線用賀駅のホームに、デフォルメの効いた薄い塗りのぼやけた女の子が降りてくるシーンを想像してみてほしい。変でしょう。

※画像は「蟹に誘われて」より以前に刊行された別の単行本、「足摺り水族館」のもの。「蟹に誘われて」では、女の子がもう少しポップでかわいいが、雰囲気は伝わると思う。

 

 表題作は4pの短編で、坂と階段の多い街並みを蟹を追いかけながら歩き、普段通らない道を通り、側溝の金網に引っかかった蟹を捕まえる、というだけの話。ちょっと不思議で少しおどろおどろしく、ホラーと見せかけてかわいく落とす。「世にも奇妙な物語」のあんまり怖くない話が好きな人はハマると思う。 主人公ちゃん(名前は無い)の、北海道訛りっぽい妙な口調がキュート。panpanyaは次来る。来て欲しい。来るべき。