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ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

歴史的事実

日記

 2015年4月6日、東京は春。天気が良すぎてうんこが漏れそうである。それほど良い天気だし、実際に少々漏れているのだとしても、こう書いておけば大丈夫。大丈夫。いつかこの日記を見なおした時、まさか本当にうんこが漏れていたなどとは思いますまい。数年後、俺は他ならぬ俺自身の書いた文章に騙されるのだ。大丈夫。漏れていない。予言の自己成就という言葉をご存知だろうか。

 歴史は、記憶は、次々に改ざんされていく。上手くやっているつもりのあなたは、人の間を器用に泳いで、渡世をしのいで、「俺はわかっている」から「大丈夫」だと思っている。しかし、誰しもが自分自身と上岡龍太郎に騙されていて、例外などない。そうやって、つまらない我々が、つまらない人生を、すごくつまらなく終えていくのだ。

 あなたには、死んだら無になってしまうと気付いて震えた日があっただろうか。それから、過去も未来も存在しないのだと知るのに5年ほどを要した。もし今、俺が死んでしまっても、何事もなかったかのように明日はやってくる。それなのに、俺の2015年4月7日だけがそこにはない。めくり忘れたカレンダーのように誰かの4月だけが進んでいって、やがて4月31日が、4月32日がやってくるような、そんな感覚。バグ?

 文章を読んだ人間は、全員が必ず勝手に勘違いをする。猛禽類も、実際のところそれを狙っている。我々は、日夜、半ば嬉々として他人の感情を捏造し続けていることをもう少し自覚した方が良い。

 本当は、真実は、誤解の余地の無い表現をすれば、または実際起こった出来事は、歴史上の事実は、あるいは誤解を恐れずに言えば、つまり、ここだけの話、2015年4月6日、午前11時頃、東京都世田谷区南東部はなかなかに天気が良いのであった。