ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

ただの酔っ払いおじさん

 このところ、記憶を外部に保存しすぎている。忘年会をやった御利益もあったのか、今年何があったのかさっぱり思い出せぬ。Googleで検索しなければ今年の1月に何があったのか、ほとんどわからない。こんな世の中でよかった。CPUとメモリさえ積んでいれば、ハードディスクがぶっ壊れていようとなんとかなる。未来。

 子供の頃、2014年はかなり未来だった。が、使途はまだ襲来していないし、第三新東京市に遷都されてもいない。汎用人型決戦兵器は全然実用化されていないし、未来の世界の猫型ロボットだって、いわんやTHATをや。ドラちゃんは22世紀か。

 これが100年後の日本だ!というような想像が流行っていたのは、俺よりも少し前の世代の子供時代だった。高度経済成長期って奴がそうさせたのだろうか。昭和60年ごろに育った俺が記憶にとどめている未来予想図は、昭和40年ごろからあまり更新されていなかった。リニアモーターカー!空中に浮く建造物!なんか透けているビル!の中に植物!的な。で、昭和60年の現実はわりとそれに追いついてた。東京はたぶん、浮かれていた。俺は、その頃どんな未来を想像してたっけ。残念なことに、全く覚えていない。

 2014年はというと、それなりに未来だ。あらゆる場所にネットワークが敷かれ、人はどこからでもそれにアクセスできる。機械の歌姫が子供たちの人気を集め、ソーシャルネット上では過激思想の政治集団が世界的に若者を勧誘する。誰もが自分の意見を発信でき、誰も人の話を聞いていない。ビットの世界のテクノロジーは進歩して、人間だけが驚くほどいつも通りだ。

 2014年、想像のフロンティアはどこにあるのだろう。ビットの中か、遺伝子と細胞か、はたまた余剰次元か。並列化された汎用コンピューターの中に再帰的に仮想化情報空間が生まれ、ビットとアトムは相互に変換可能となり、情報と物質の垣根は取り払われ、重力はn次元方向へ向かって減衰していけば良い。ああ、すぐそこに、見えない次元が存在しているかもしれないなんて。ブラックホールの中に別の宇宙があるかもしれないし、ビッグバン以後膨張し続ける宇宙の縁は、外から見たら事象の地平線なのかもしれないなんて、信じられますか奥さん・・・。情報科学よ、生物学よ、物理学よ、どこまでも進歩するがよい。もっと俺を楽しませろ・・・!などと言いながら壮絶な熱的死を遂げるわたくし。エントロピー

 未来の俺は、クラシック量子ラガーで酔っている状態と酔っていない状態が重ね合わさっている。観察によって波動関数は収束するだろう。波かつ粒子、素面かつ酩酊、猫は生きながらにして死んでいる。しかし、俺が酔っているということは統計的にしか説明できないのだ。そうだろうプランク博士?