やばい(エルトポ)
通算120本目にして、とんでもない映画と遭遇してしまいました。良い意味でも悪い意味でもなく、文字通りとんでもない、ブッ飛んでいる。
聞く話によるとこのエルトポはカルト映画の金字塔とのことで、ジョンレノンが買い取ってしまうくらい絶賛したらしいんですが、なんというか今の私にはこの映画を真正面から受けきるほどの体力がございません。シュールにすら見えてしまって、もはや大爆笑しながら見てしまいました。特に前半。
とにかく無茶苦茶なエネルギーに満ち溢れていることは間違いなく、ちょっとカトリックかプロテスタントではなさそうな(ロシア正教とか南米ニュアンスの?)キリスト教的世界観と、西洋から見た東洋(ブシドー、ZEN、ヨガ的な何か)をブチ込んでエロスと暴力で煮しめた暗黒闇鍋といった様相で、前半部分は聖書と北斗の拳とバガボンドを足して3で割らずに西部劇のニュアンスでまとめたら何故かこうなっていたんだけど、マンガで一番近いのは山本直樹の「ありがとう」だと言えば多少なりとも雰囲気が伝わるでしょうか。
それらの要素が謎のバランスで配合された結果として未知の旨味成分が発生し、ミクスチャーぶっ殺しウェスタンと言いましょうか、ジーザス武蔵クライスト・ミーツ・拳銃というような絶妙な按配に纏め上がってしまっており、この映画を破綻せずに最後まで撮り切っている監督の力量に驚嘆せざるを得ません。
何がブッ飛んでいるのかと言うとまあ全部なんですが、言葉で説明するのもアレなので、とりあえず前半部分から何点かピックアップしてキャプチャでやりますと、
とりあえず、最初の村は屍山血河(後ろに乗っている息子が全裸なのも謎)。この村をやったのは「大佐」とかいう奴なんだけど、その一派は完全に北斗の拳的ヒャッハー軍団で
ヒャッハー軍団が、修道士っぽい感じの若い綺麗な顔立ちの男4人を
こうして
こうする。
コテンパン(かなり可愛くデフォルメした表現)にやっつけた大佐に、「お前は何者なんだ」と問われて、主人公曰く。私は、真顔で神を自称する人間を又吉イエスさん以外では初めて見ました。このあと、
何故か砂に埋まってみたり
砂漠で、女の尻っぽい岩に一発ぶっ放すと
割れ目から恵みの水が噴き出す秘術を披露。更に、
連れの女も明らかにペニスっぽい形状の岩から水を湧き出させる秘術を会得。
とまあ、こんな感じで砂漠を旅しながら、4人のガン・マエストロを探して倒していくという修行のような求道のような、武を極めるみたいな感じの展開が前半部分です。何を言ってるかよくわからないとは思うんですが、ほんとにこんな感じなんですよ。でも、ただ無茶苦茶なだけじゃない、哲学的なテーマが横たわってるということは、見たらなんとなくわかります。じゃけん、見てみてねー。後半はガラッと展開が変わります。そこは見てのお楽しみということで。
さて、エルトポを見てて気になったのが、マンガへの影響です。前段で上げたマンガ作品が直接的に影響を受けているのかははっきりとはわからないのですが、私としては、マンガを読んでいるという下地があって(逆輸入的に)かなり理解が助けられた面がありました。
考察、と呼べるほどのもんはないのですが、マンガで描かれているエルトポ・オマージュっぽい例に2つ、気がつきましたのでこちらも挙げておきます。
1。大佐が手下の4人を犬扱いしているシーン。手下のゴロツキどもは大佐の私物である女に手を触れたため罰を与えられています。4人は大佐に対する恐怖のあまり、犬呼ばわりされてハッハッハッ、とかアオンアオン、とか言ってます。
おなじみ(?)冨樫義博「HUNTER×HUNTER」の人間犬。
2。ヒャッハー軍団の一人が山で石を女の形に並べて、擬似ファックするシーン。
山本直樹「僕らはみんな生きている」。タルキスタンのジャングルの中で疲弊しきった主人公が日本に残してきた恋人の名を呻きながら擬似ファックするシーン。このシーンといい、暴力とエロスのぶっ飛びかたといい、山本直樹先生はエルトポからかなり影響を受けているのではないかと思う。
というわけで、色々書きましたけども、この映画はネタバレしても決定的なネタバレにはなり得ないというか、見てみないことにはちょっとその迫力が伝わりません。残酷なシーンに対する耐性があるならとりあえず見てみたらいいと思いますよ。決して「面白い!」と万人に勧められる映画ではないですが、すさまじいエネルギー。後で、コメンタリー付きで2回目を見てみようと思います。