ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

デッドマン・ウォーキングの感想(ネタバレあり)

 勝手に秋の映画推薦祭り開催中です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 デッドマン・ウォーキングを見ました。見ましたよ。見たんです。やばいやばい。かなり辛い。精神的にキツイ映画に対する耐性はかなりあると自覚しているのですが、相当ダメージ残りました。やや下痢気味になりましたからね。死ぬのってコエーッ

 

あらすじ

 10代の若いカップルをレイプして殺した罪で死刑を宣告されたマシューからの手紙を受け取り、尼僧のヘレンは死刑の撤回に手を貸そうとします。マシューは自尊心が高いし頭が悪いし自分を抑えられない馬鹿で、差別意識もむき出しの、顔だけ良いネトウヨみたいな奴です。「俺はやっていない」「あいつ(共犯の男)は終身刑で、俺は死刑、不公平だ」「ヒトラーユダヤ人を沢山殺したが、政策は良かった」みたいなことを言っちゃうので、死刑を覆すためのチャンスも次々に閉ざされていきます。

 ヘレンは大変人徳に優れた女性で、尼僧の割りに説教臭くないし、(修道服でなく)私服で刑務所に通い、ときには少々品の無いジョークもカます、なんというかバランス感のあるとてもナイスおばちゃんです。形骸化した信仰に凝り固まった聖職者とは違い、聖書の言葉を「生きた言葉」として実践するために日々生きていて、その中で死刑制度に疑問を抱いている。しかし、ヘレンはマシューの側に立つことで、マシューに殺された2人の遺族から激しい憎悪を向けられることになります。遺族と語り合う中で、殺された子供の前に開かれていた未来、子供を殺されたことによって崩壊した家族をまざまざと見せ付けられ、大いに苦悩します。

 結局、万策尽きてマシューの死刑が確定的となり、異例ながら執行日までマシューのカウンセリングを引き受けたヘレンは、死に向かうまでの日々をマシューと過ごしながら、魂が救われるよう、正直に罪を告白し悔い改めるよう、マシューに語りかけていくのですが・・・

 

感想

 というような物語なんですが、こんなにしんどい映画ははじめてです!やばいやばい、かなり辛い!(2回目)まず、ヘレンが聞き取っていく遺族の話が超ヘビー。ある日、2つの家族が突然、何の落ち度もないのに不幸のどん底に叩き落されているんだから、この悲しみはどうすればいいのでしょう。

 一方で、司法の制度とは言え一週間後に死ぬと定められてしまった人間が、何を思うのか、その恐怖がモロに描写されていて、こちらの方がより辛い。ショーン・ペンの演技が良すぎるくらい良いんです。死刑が決まって、それまでの数日を待つ間、気が狂っちゃうほど恐ろしい。恐ろしいに決まってるわーそんなん。死ぬ日を決められるなんて、どんな拷問だよ。

  ヘレンが傍に居ることによってマシューはその恐怖からいくばくか救われるんですが、そんな慰めをこの動物以下のクソ野郎に与える必要は無い!といって遺族は怒り狂う。勿論、罪もない人を殺したマシューの方が悪いというのはそうなのですが、動物以下の殺人鬼にはどんな苦しみを与えても良いのだ、という怨嗟の声が連なるその真っ只中で、マシューに人間として死ねるよう罪の告白を促すヘレン、マジでタフ。

 もうとにかくしんどかったんですが、死刑制度の是非は単純には割り切れない問題だということが一発で落ちてくる大変優れた映画です。法律を守らない人間は殺しても良いと考えている人も、死刑は野蛮だから撤廃すべきだと考えている人も、一度は見てみることをおすすめします。あと、死刑制度なんて馬鹿なあたちには関係ないニャーン、と思っている人はたぶんその通りなので「死霊の盆踊り」でも見てると良いと思いますニャーンッ!

 

 なお、朝の5時頃に見終わって暗い部屋で一人「非常に、キビシーッ!」などと叫んでおりましたが、こちらの動画を見ることでなんとか精神状態の建て直しを図ることができました。

 異常な自由度と笑撃的なバグ満載の怪作、SKATE3を世に送り出して下さったElectronic Arts社様には厚く御礼申し上げます。