ガタガタ鰯太郎A

〜鰯太郎Aは二度死ぬ〜

本日の名文

news.livedoor.com

 

 こういったゴシップ系の記事を書いている人間の心には、最終段落に何か気の利いたことを書かなければならないという内圧のようなものがあるのだと思う。本当に気の利いた一文に仕上がっていることはまれなのだが、このライターは実に良い仕事をした。

だが、“シャキン”と切られた被害者の性器も、そして小番被告の犯した罪も決してリセットされることはない。スキンヘッドだった小番被告の髪の毛だけが伸び始めていた。 

 この独特の、しょうもない余韻がお分かりいただけるだろうか。

夢メモ(2015年の冬頃?)

 見慣れない、整頓されていて綺麗で居心地の悪いマンションで遊んでいると、24時に差し掛かりそうな時間になっていた。客人が家に帰ろうとすると「何で帰るんだ」と文句を言う人間がいるが、このマンションの主もそういった種類の人間のようだった。

 人は、未来にちょっとした希望さえあれば今を我慢することができる。だから、もしかしたら私が戻ってくるかもしれない、というわずかな期待があれば、この場を離れる私を渋々ながら送り出すだろう、そう思った。私は「終電に間に合わなかったら戻ってきます」と心にもないことを言って、マンションの主の部屋を辞した。

 玄関と続きの広いリビングには客人たちの荷物が散乱していて、その中に私のドラム機材などが見て取れる。私はどうやらライブ帰りにこの部屋に立ち寄ったらしい。しかし、何を持ってきたのかがわからないので、何を持って帰れば良いかがわからなかった。仕方なく、見慣れたフットペダルの四角いケースだけを拾って、玄関のKに声をかけた。

 Kは中学の頃から真面目を絵に描いたような男だったので、終電を逃すようなことはしないだろうと私は踏んでいた。Kは、もたもたと荷物と格闘している私に焦れている。

「Mはまだ雪が谷のあたりに住んでんの?」

「そうみたいだよ」

「じゃあ、3人一緒の方向だな」

 

 渋谷駅に向かうタクシーの中で、何故タクシーに乗っているのだ、と俺は不満に思っている。タクシーに乗っているときは、いつも不満だ。それはそれとして、Kは結婚したらしい。タクシーの運転手はアグレッシブなハンドルさばきで、こんな時間にまだ人の往来している建物の中を突っ切って、終電のホームに一番近い改札の前へ乗り付ける。3人で乗って一人2000円。俺は色々とおかしいだろうと思いつつ、終電に乗ってから精算しよう、と提案する。Kは手早く6000円を払った。Mは、タクシーに乗っていることになっていたが、姿は見えなかった。

 駅に着いてみて、私は自分の勘違いに気がついた。KとMが乗ろうとしていた終電は、私と違う路線らしいのだ(雪が谷に住んでいるのに、だ)。私が家に帰り着くための終電は、今にも発車しようとしているらしかった。ホームに駆け下りると列車はちょうど走り始めたところで、ギシギシと音を立てながら加速している。それを追いかけてホームを全力で走る私の姿を見て、最後尾に乗っていた運転手が列車にブレーキをかけた。が、何故か完全には止まってくれない。追いつけるギリギリの速度を保ったまま。

 最後尾は通路がむき出しで、ホームから飛び乗った直後、運転手が再び列車を加速させた。慣性の法則で後ろに強く身体を引かれて線路に放り出されそうになるが、通路の壁に掘られた東南アジア調の紋様の溝に指をかけてつかまり、なんとか列車の推進力の助力を得る。

 永遠にも感じられた数十秒を耐え抜いて、ようやく壁に張り付いたカエルのような姿勢と緊張から解放されると、全身にびっしょりと汗をかいていることに気がついた。それとともに、ようこそ終電へというような、祝福された気持ちが湧き上がってくる。「それが心地よい疲労というものだ」と誰かが唱えている。

 人心地がついてようやく客車の様子が目に入ってくると、古めかしい総木目造りの埼京線だか新幹線のようなこの列車は、次に品川に停車したあとは、どこかはるか遠くへ向かって出発してしまうらしく、そうなってしまっては家に帰るどころではない。やっと終電に乗ったと思ったら、また地獄の乗り継ぎレースが待っていると思うとうんざりだった。

 

品川

目黒線最終が待っている

横浜鉄道葵線という見慣れない路線が目に入る

日付が変わったのでスピリッツを売っている

俺は買って、電車のシートに置いたのだが、置き忘れて取りに行っている間に目黒線は出てしまった

もう仕方ないので、品川からタクシーに乗って帰ろうと思うが、スピリッツを探してうろうろしている間に、乗り込んでいた葵線の最終が発車してしまう。

葵線は錆びた鉄骨がむき出し

先頭車両に乗っていたら、カンカンカンという音を立てながら上がって行ったと思うと、ガクンと視界が下に下がって、体が浮いている感覚。眼下には大きな川が流れている。加速をつけて川に落ちていくと思ったら、急に真っ暗になる。トンネルに入ったらしい。

隣のオヤジが、俺これ昔見たことあると言い出す。

真っ暗の空間の全面に、「踊る大捜査線 THE MOVIE」の文字

右後ろの女性に、出るとき声をかけて、と頼む

(このままずっと見てしまいそうだから)

顔をしっかり見たらオカマで、新宿で店をやってるらしい

チャージが500円で飲み物を頼まなければ。

いいの?いいの?みたいな感じ 

 寂しいことを「寂しい」と言えない大人に育ってしまったらしい。損をしている。

レーズンサンド

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 世界で一番美味い菓子である。どんな食い物でもサクサクとしっとりが組み合わされば最強で、右手からクッキー、左手からレーズンを取り出した期待のマジシャンがオリーブの首飾りをバックに合体魔法を唱えると、何処からともなくレーズンサンドが出現して嬉しい。こちらはレーズンサンドさえあればこの世の苦しみさえも愛せるといった状況ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。美味い。
 六花亭、小川軒、マルセイ、いずれも甲乙つけがたく、レーズンウィッチ、バターサンドなど様々な呼び名があり美味い(2個目を食う)。生まれてくれてありがとうレーズンサンド。
 こんなに美味いレーズンサンドだから、知らない大人にレーズンサンドを貰った子供は、大人になる前に何処かへ連れて行かれてしまう。ヤバい。レーズンサンドを規制する法案を提出しなければ子供たちが危ない。ポピュリズムの権化と化したおれは猜疑心の虜になり、不安から逃れるように脱法レーズンサンドでバッドトリップしながら、たくさんの子供を引き連れて森に消えていく道化師の夢を見ていた。彼の眼は笑っていなかった。(いや、おれは笑っていた?)

BAD END